MJ

田村友一郎

劇的な映像技術の進化を遂げた20世紀、映像の世紀とも称される20世紀を代表するポップアイコン、マイケル・ジャクソン。そのセンセーショナルな姿は多くの映像メディアに記録されるとともに多くの人々に記憶された。ワールドツアーなどのライブ会場のみならず、彼が降り立った都市で記憶された実像と、それらを記録した映像。そのマイケルの足跡の記録と記憶の間に露見する光と影。今回、試みるプロジェクト「MJ」は、映像における記憶と記録に関わる光と影の実践である。映像を構成するのは無論、光と影である。映像メディアのその原初、19世紀に誕生した光と影をダイレクトに扱う写真メディアは、20世紀の映像メディアの発展へと引き継がれる。プロジェクトでは、その映像の20世紀にポップアイコンとして活躍したマイケルが実際に訪れた場所のドキュメンテーションを通して映像メディアへの再考を促す。

神託
通算8度目の来日となった2006年、マイケルは、東京北区にある児童養護施設、星美ホームを5月28日に訪れた。その様子は当時の記録映像に残されている。同時にその場に居合わせた人々の記憶にも深く刻まれた。帯同していたTVカメラにマイケルが最初に語ったのはこのような言葉である。Please document everything, action, reaction, cause and effect, them to me, me to them. 映像における記録する行為がもたらすその顛末と、見ること/見られることへの根源的な示唆。それら身をもって体現したマイケルだからこそ、この言葉が持つ意味は大きい。20世紀に最も記録/記憶された人物、マイケル・ジャクソンが放った神託ともとれるこの言葉の真意とは何か。

神話、もしくは聖地の発生
2006年に来日したマイケル・ジャクソンが訪れた東京赤羽の児童養護施設。その施設の集会所に集められた子供たちを前にマイケルはステージの縁に座り手を振ってみせた。その場所はのちにマイケルのファンの聖地となる。マイケルの死から10年が経過しようとしている今なお、マイケルのファンが時折この場所に集う。このことは、神話や聖地がいかにして発生するかという問いへの手がかりとなりうるのではないか。映像の20世紀に生み出された神話を体現する存在、マイケルが施設の集会所に残した神託に着目し、その真意に迫る。

✴︎このプロジェクトの顛末は、2019年2月9日から森美術館で開催される「六本木クロッシング2019」にて発表される。
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/roppongicrossing2019/

協力:dear Me Project
http://dearme.a-i-t.net